反応性(架橋性)スチレンブロック共重合体 〈セプトン®〉 V-シリーズ
〈セプトン〉は、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(Hydrogenated Styrenic Thermoplastic Copolymer, HSBC)です。多くのTPEコンパウンドに使用されており、様々な形態での加工が可能です。一部の銘柄は各種認証を取得しており、日用品、メディカル部品、自動車用部品、オイル改質に使用されています。このスチレン系TPEは、熱可塑性エラストマーコンパウンド、樹脂改質剤、接着剤、軟質塩ビの代替品、制振製品など、幅広い用途に対応しています。
HSBCは、ポリスチレン系ハードブロックと柔軟なポリオレフィン構造(水添ポリジエン)のソフトブロックで構成されています。ハードブロックがポリスチレンのガラス転移温度(Tg)以下で架橋点として働き、ソフトブロックが弾性を発揮するため、HSBCはゴムのような弾性を示します。また、ソフトブロックが未水添であるスチレン系エラストマーと比べ、水添により優れた耐熱性・耐候性を発揮します。
水添スチレン系エラストマーはハードブロック(スチレン)とソフトブロック(エチレン・プロピレン・ブチレンなど)で構成され、各種プラスチックと同様に加熱して容易に成形できるとともに、ゴムのような弾力性に富む特長があります。この樹脂を成形する場合はポリプロピレンやプロセスオイルと単純にブレンドするか、この樹脂を架橋しながらブレンドしてコンパウンド(成形前材料)にし、それを用いることが一般的です。しかし、この樹脂を用いて、架橋しながらコンパウンドしたものはソフトブロックのみ架橋するため、耐熱性や耐油性に限界があり、これらの機能を重視する市場では現在も加硫ゴムが使われています。
業界では、より高い温度での使用など、特に厳しい使用条件に適したTPEが求められています。クラレは水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(Hydrogenated Styrenic Thermoplastic Copolymer, HSBC)の高機能化の一環として、従来品より耐熱性、耐油性を向上させたコンパウンドを生産できる〈セプトン〉V-シリーズを開発しました。
「V」は「vulcanizable(架橋可能)」の頭文字であり、〈セプトン〉V-シリーズは〈セプトン〉標準グレードに対し、ハードブロックの組成を変えて反応性を持たせるとともに、当社が開発した特殊なコンパウンド技術を用いることにより、コンパウンド生産時にソフトブロックに加え、ハードブロックも架橋することが可能となります。これにより、〈セプトン〉 V-シリーズを使用したコンパウンドは従来のスチレン系ブロック共重合体をベースにしたコンパウンドよりも、高温下での性能が向上します。
また、ハードブロックの架橋により弾性特性と低温特性を維持したまま、優れた耐熱性、長期圧縮永久歪、耐油性を発揮します。
これにより、加硫ゴムを使用する市場の中で従来品では展開が難しかった自動車の各種シーリング材や建築材料などの分野への参入が可能になります。
特長と強み
- 架橋が可能
- 高い耐熱性
- 長期的に安定した圧縮永久歪み
- 耐薬品性、耐油性
- 高い破断伸度
使用例
- 建築建材部品
- 自動車用部品
〈セプトン〉 V-シリーズの特徴である動的架橋は、通常のゴム加工で必要とされるコストと時間のかかる加硫の代替となります。EPDMの代替品として注目されており、同時にTPEのような加工性の良さも兼ね備えています。
〈セプトン〉 V-シリーズでは、押出ライン上でハードブロックとソフトブロックの両方を動的に架橋することが可能です。ご興味のあるお客様に、クラレならではのノウハウをご提供いたします。
動的架橋により、より高い耐油性と耐熱性、特に高温での圧縮永久歪み値が小さいという特長を持つコンパウンドを製造可能です。〈セプトン〉 V-シリーズを使用したコンパウンドは、自動車のシール材、構造材(例:エンジンルーム内)など、従来のTPEでは溶融してしまい、加硫ゴムが必要とされる場面での利用に適しています。架橋した〈セプトン〉 V-シリーズを使用したコンパウンドは、1,000時間経過後でも低い圧縮永久歪み値を示します。
〈セプトン〉 V-シリーズを使用したコンパウンドはより高い耐油性と耐熱性、特に高温での圧縮永久歪み値が小さく、1,000時間経過後でも低い圧縮永久歪み値を示します。
自動車のシール材、エンジンルーム内など、従来のTPEでは溶融してしまい、加硫ゴムが必要とされる場面での利用に適しています。
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