PUソールは製靴業界を制覇し、その市場は成長し続けています
ポリウレタン(PU)は、単一の素材でありながら耐久性、柔軟性、手頃な価格、快適性、スタイルを兼ね備えているため、製靴業において、急速にあらゆる種類のソール(靴底)のスタンダードとなってきました。
2021年に46億米ドルと評価された世界のPUソール市場は、わずか2年で20%成長し、2023年には55億米ドルとなり、2030年 末には ほぼ倍の 101億米ドルになると予想されています。 世界の靴生産量の85%以上を占めるアジア・太平洋市場は、PUソールの技術革新でリードしています。
専門家は、ポリウレタンの世界市場規模が、靴への使用の増加に牽引され、2,710万トンから3,130万トンへと驚異的な成長を遂げると予測しています。ポリウレタンが新素材として選ばれている理由については、こちらをご覧ください。
ポリウレタン製ソールとは?
ポリウレタン製ソール(PUソール)は、革新的でカスタマイズ可能な靴のパーツであり、急速に世界中の靴メーカーに採用されるようになっています。
その耐久性、柔軟性、快適性により、ポリウレタン製品はインソール、ミッドソール、アウトソールなどに広く使用されています。ポリウレタン製ソールは、スリッパやスニーカーから作業靴や安全靴まであらゆるタイプの靴で使用されています。
PUソールが製靴市場を席巻している理由を理解するために、様々な種類のPUソールとその利点を見てみましょう。イメージを明確にするために、利点だけでなく欠点ならびに他の一般的なソール素材との比較も取り上げます。
PUソールの種類
PUソールは、その種類、フォームファクター、化学的基本組成、添加剤によって、さまざまな用途に合うように調整することができます。
ソリッドPUソールとセル状ソールの比較
ソリッドPUソールは固形のポリウレタンで構成され、多くの場合、金型を使って成形されます。これらの製品は、重量があり、光沢と耐久性に優れているため、最も多い用途はアウトソールです。
セル状PUソール(フォームラバーソールとも呼ばれます)は、液状のポリウレタンに膨張剤を注入して製造され、密度が低く耐久性に優れたスポンジ状で軽量のセル状構造を持ちます。これらの製品は、多くの場合ミッドソールやインソールに使用されます。
ポリウレタン製ソールは、履き心地を重視したソフトで柔軟性のある上層と、耐久性を重視した丈夫な下層から成る2つの異なる密度を持つ一体型とすることもできます。
ポリエステルPUとポリエーテルPUソールの比較
ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールの反応によって合成されます。この工程では、得られるポリウレタンの分子量と材料特性を調整するために、さまざまなポリオールが使用可能で、最も一般的なものはポリエステルPUまたはポリエーテルPUです。
ポリエステルPUソールの密度は280~1,100 g/Lで、インソール、ミッドソール、アウトソールに使用されます。耐薬品性、耐油性、耐熱性、耐摩耗性が向上しているので、安全靴やスポーツシューズによく使用されます。
ポリエーテルPUソールの密度は通常450~600 g/L程度で、多くの場合、単密度ソールとして使用されます。常温での加工が可能で、仕上がりに優れ、耐水性があるため、ストリートシューズやサンダルに適しています。
熱硬化性(PU)ソールと熱可塑性PU(TPU)ソールの比較
熱硬化性ポリウレタンは、ソールに使われる最も一般的なタイプで、このブログでも詳しく触れます。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ゴムに近い性質を持ち、溶かしたり、改質したりすることが可能な、いわゆる熱可塑性エラストマーです。TPUはより高価なオプションで、柔軟性や滑りにくさは劣りますが、軽量で耐薬品性、耐切創性に優れています。
PUインソール、PUミッドソールおよびPUアウトソールの比較
インソール、ミッドソール、アウトソールに適した素材を製造するために、ポリウレタンの配合や製造工程は頻繁に変更されます。一般的に、インソールとミッドソールはより軽く、より快適で、より柔軟性があり、アウトソールはより重く、より丈夫な傾向があります。
PUの利点
靴は快適で、耐久性があり、軽量であることが求められますが、PUソールはその特性を、便利で高い費用対効果を備えたパッケージで提供しているのです。PUソールには多くの利点があり、ほとんどの靴にとって最適なものです。
ポリウレタン製ソールは、優れた素材特性を備えています。
- 耐久性:PUソールは丈夫で耐摩耗性に優れているため、あらゆるタイプのソールによく使われています。耐久性に優れているため、他のどのソール素材よりも長持ちします。
- 軽量:PUソールは非常に軽く、インソール、ミッドソール、アウトソールでの使用に最適な低密度のものが数多くあります。アウトソールに使用されている高密度のポリウレタンでさえ、他のアウトソール素材よりも軽量で丈夫です。
- 耐薬品性、耐水性:ポリウレタンは丈夫で耐薬品性に優れたポリマーです。ポリウレタン製ソールは、用途に応じて、耐水性や耐薬品性、耐油性を高めることができます。
- グリップ性能:PUアウトソールはグリップ性能に優れ、滑りにくいので、安全靴、スポーツシューズ、作業靴など屋外での使用に最適です。
- 確立された用途:現在最も一般的に使用されているソール素材であるポリウレタンは、数多くの種類があり、ほぼすべての用途に適合することができ、理想的な取り扱い方法も広く知られ、確立されています。
ポリウレタン製ソールのシューズは、履く人に多くのメリットをもたらします。
- 快適で柔軟:軽量のPUソールは滑らかで柔らかく、弾力性があるので、足にフィットし、インソールやミッドソールに最適です。より重いタイプのポリウレタンは柔軟で弾力性が高く、快適で通気性の良いアウトソールとして広く使われています。
- クッション性:PUソールは弾力性に富み、密度が低いため、スポーツシューズや安全靴に用いた場合の衝撃吸収性と緩衝性に優れています。
- 優れた費用対効果:ポリウレタンは、他のソール素材よりも製造コストが安く、加工もしやすいため、製造には最適な選択肢です。また、耐久性があるので、より長持ちし、費用対効果の高い靴をお客様に提供することができます。
- 多種多様な仕上げ:ポリウレタンは、着色、パッド印刷、ブラッシングなどのカスタマイズ・オプションにより、多種多様な仕上げが可能で、デザインの自由度を飛躍的に高めます。
- 健康上の利点:PUソールは低刺激性で通気性があり、サンダルからスポーツシューズまで幅広く使用できます。
PUの欠点
PUソールの主な欠点は、長期間使用すると劣化しやすいことです。靴を保管している時、空気中の水分がポリウレタンを構成するポリマー鎖と反応し、加水分解というプロセスが起こります。
このプロセスによって、ポリマー鎖は時間の経過とともにゆっくりと分解し、材料はよりもろくなり、柔軟性を失っていきます。その結果、特に古いPUは圧力がかかると崩壊する可能性があります。PUソールの靴を湿度と温度の高い場所に保管すると、このプロセスが加速されますが、定期的に履くことで新鮮な空気に触れさせ、このプロセスの進行を遅らせることができます。
PUソールの靴の寿命を延ばすには、涼しく乾燥した場所に保管し、定期的に履くことが効果的です。PUソールは適切に保管されていないと劣化が早まる可能性がありますが、それでも5年から10年は履くことができます。加水分解が問題になるずっと前に、別の理由で靴の交換が必要になるくらいです。さらに ポリエーテル系PUソールなら、靴の寿命が特に重要な用途において、より高い耐加水分解性を提供することができます。
PUソールに価値はあるか?
PUソールは市場で最高の機械的特性を低コストで提供できるので、製靴業における多くの用途でデファクト・スタンダードな素材です。
耐摩耗性と脱型性に優れた強靭なポリウレタン配合を必要とされていますか?
耐摩耗性、脱型のしやすさ、生産性を向上させるPU用ポリマー添加剤であるクラレ液状ゴムに関するお問い合わせには、下記のお問い合わせフォームをご利用ください。
PUと他のソール素材との比較
ニッチな用途には他のソール素材が適していることもありますが、PUソールは柔軟性が高く、通常は最初に検討すべきオプションです。
PUと加硫ゴムの比較
ゴムは優れた滑り止め効果を発揮しますが、PUソールは軽量で安価、柔軟性、通気性に優れ、耐摩耗性に優れ、同等の滑り止め効果を発揮します。PUは時間の経過とともに加水分解によって劣化しますが、ゴムの場合も含まれる可塑剤が時間の経過とともに拡散し、硬くもろくなります。
PUとTPUの比較
TPU(熱可塑性ポリウレタン)は、射出成形などの大量生産工程に適した熱可塑性エラストマーです。PUとは熱硬化性ポリウレタンのことで、加熱しても溶けず、高い耐熱性を有しています。
PUとEVAの比較
PUとEVA(エチレン酢酸ビニル)は、どちらもスポーツシューズによく使われる柔軟でクッション性のある素材ですが、それぞれに長所と短所があります。EVAは安価で軽く、足にフィットしやすいですが、耐久性に劣り、使っているうちにどんどん圧縮され、クッション性が低下してしまいます。PUは耐久性に優れ、グリップ力も高いのですが、やや高価で、長期間使用すると加水分解によって分解してしまいます。
PUとレザーの比較
レザーソールは適切な手入れをすれば長持ちしますが、より多くのメンテナンスが必要で、自然に摩耗し、PUソールよりも劣化が早いのが特徴です。PUの方が安価で、快適で、軽く、レザーのように見せることもできるので、より良い選択と言えます。
PUソールが有効な靴のタイプは?
ポリウレタンは柔軟な素材で、ほとんどの種類の靴に使用できますが、PUによって可能になる、軽くて耐久性があり、快適なソールを最大限に活用できる特殊な用途がいくつかあります。スポーツシューズやサンダルなどいくつかのタイプの靴は売上増加の主な原動力となっています。
スポーツシューズ
スポーツシューズのソールには多くの要求事項があります。耐久性、快適性、通気性、軽量性、柔軟性、耐衝撃性、防滑性などです。PUソールは、性能面で妥協することなく、手頃な価格でこれらすべての品質をスポーツシューズで実現させることができます。
ウォーキングシューズ
日常的に用いるウォーキングシューズは、履く人の快適さを保ちながら、過度の磨耗や損傷に耐える必要があります。PUソールはこれらの目標を達成し、耐久性、柔軟性、耐水性に優れたアウトソールと、軽くて快適なインソールを提供します。
スリッパとサンダル
PUソールは、安価で履き心地の良いものから高級レジャーシューズまで、一般的に使用されています。PUソールは、配合のバリエーションが豊富で、密度が低く、インソール、ミッドソール、アウトソールとして使い分けることができるため、カジュアルシューズのほぼすべてのニッチを満たすことができます。
安全靴
丈夫で軽量な素材であるポリウレタンが、安全靴のソールとして選ばれるのは当然です。その耐薬品性、耐水性、優れたグリップ性能により、着用者を保護しなければならない様々な状況において、理想的な性能を発揮します。
PUソール製造
ポリウレタン・ソールは、イソシアネートとポリオールの反応によってポリウレタン・ポリマーを形成して製造されます。この最終ポリマーの特性は、使用される成形プロセスと、製造中に使用される水と膨張剤の濃度の両方によって制御されます。
ダイレクト・インジェクション・プロセス(DIP)
ダイレクト・インジェクションでは、液状のポリウレタンを靴に固定した密閉金型に押し込み、強力に接着したアウトソールを作製します。この工程で使用される圧力によって、優れた物理的特性と良好な結晶粒構造が保証されます。
注入
注入では、液状のポリウレタンをミキシング・ヘッドからアルミ型に流し込みます。その後、金型を閉じて素材を固め、冷却してソールを形成します。
クラレ液状ゴムによるPU改質
クラレは、耐摩耗性と生産効率を向上させるために、インソールとアウトソールの両方に最適なポリウレタン添加剤であるクラレ液状ゴムを提供しています。
クラレ液状ゴムをポリウレタン配合物の添加剤として使用すると、耐摩耗性が大幅に向上します。当社が社内で行ったテーバー摩耗試験*では、L-BR-307を添加する前のPUでは、82 mgの表面摩耗が見られました。一方、L-BR-307を添加した後のPU製品は、わずか28 mgしか摩耗せず、著しく改善されており、市場で最も耐久性のある素材となっています。その結果、内側も外側も長持ちする靴のための非常に丈夫なポリウレタンが誕生しました。
*試験方法JIS K7312、H-22研削砥石、1 kg荷重、1000回転。
クラレ液状ゴムをポリウレタン製ソールの添加剤として使用すると、脱型性も向上させます。クラレ液状ゴムを含むPU配合物は、金型からの取り出しが容易で、生産速度の向上、製品ロスの削減、エネルギー消費の抑制により、工程をよりスムーズにし、費用対効果を高めることができます。
クラレ液状ゴムは、インソールとアウトソールが一体化したPU製サンダルにすでに採用されており、顧客にとっては製品の品質と耐久性の向上、メーカーにとっては効率の向上をもたらしています。
メリット
- より丈夫なソール: 耐摩耗性が向上し、丈夫で長持ちする。
- よりクリーンな脱型: 生産時間の短縮と製品ロスの削減
- 柔軟性: インソールからアウトソールまで、あらゆるPU配合物に最適。
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