お問い合わせ

森下 義弘
エラストマー事業部
マーケティング担当

お問い合わせ

ポリマー接着剤とは

ポリマー接着剤は、ポリマーからなる接着剤です。ポリマーは、「モノマー」と呼ばれるサブユニットが連なって結合した大きな分子です。

これらの接着剤は、金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミックなどのさまざまな基材と複合材料を強力に接着することができます。

ほとんどのポリマー接着剤は合成された人工材料になります。柔軟性、耐熱性、耐薬品性、導電性など、用途に応じた特性を持たせることができます。

ポリマー接着剤の作用とは

ポリマー接着剤は、あらゆる接着プロセスで作用する2つの力を利用します。すなわち、接着力と凝集力です。

接着力と凝集力

接着力とは、2つの異なる物質の分子をくっつける力のことです。例えば、水滴がガラスの表面に付着するのは、水分子とガラス分子との間の接着力によるものです。

ガラス表面への水滴の付着(接着)

凝集力とは、同じ種類の分子同士を結びつけておく力のことです。例えば、グラスに水を上まで満たし、さらに数滴注意深く加えると、水がグラスの縁の上にドーム状の構造を形成するのを観察することができます。この現象は表面張力と呼ばれ、水分子間の水素結合の凝集力によって引き起こされます。この凝集力により、表面積の大きい軽い物体は、アメンボやこのクリップのように水面に浮いていることができます。凝集力によって、雨が細かい霧ではなく水滴の形になる理由も説明できます。

水の表面張力(凝集力)

ポリマー接着剤が機能するには、接着力と凝集力の両方が必要です。接着力が弱すぎると、接着剤はその場で基材にくっつきません(接着不良)。凝集力が弱すぎると、接着剤はそれ自体を維持できなくなります(凝集破壊)。

接着力と凝集力

結合

結合には、静電的結合、機械的結合、化学結合の3種類あります。

静電的結合

静電的結合は、イオン間の「吸着」力、すなわち磁石のように引き合う接着剤の荷電分子と、逆の極性に荷電した基材分子との間の「吸着」力に依拠しています。これらの力は、それを発見した研究者の名前にちなんで「ファン·デル·ワールス力」とも呼ばれています。

静電的結合は比較的弱い結合です。この接着がうまくいくのは、接着剤が基材上に広がり、表面がよく濡れ、互いの表面が非常に接近している場合に限られます。

静電的結合と機械的結合は比較的弱結合で、化学結合は比較的強い結合です。

機械的結合

機械的結合は、接着剤が基材表面の穴から流れ込んだり、突起物に付着したりすることを利用します。このような接着は、基材の表面にシボや小さな穴がたくさんある場合に効果的です。

化学結合

化学結合は、接着剤の分子と基材の分子の間の化学反応に依拠しています。そのためには、接着剤と基材が化学的に相溶性であることが必要で、そうでなければ反応は起こりません。

物質が相溶性であれば、はるかに弱い静電的結合に比べ、非常に強い化学結合が形成されます。

場合によっては、相溶性のない化学物質同士が、カップリング剤を介することによって間接的に化学結合することもあります。

参考情報

カップリング剤は、2つの異なる物質間の相互作用を改善するという意味で、相溶化剤と同様の役割を持ちます。ただし、カップリング剤は接着能力を向上させ、相溶化剤は混和性を向上させるという違いがあります。

熱可塑性接着剤と熱硬化性接着剤の比較

接着剤を分類する方法はたくさんあります。その中でも、分子構造に基づく熱可塑性接着剤と熱硬化性接着剤の区別は重要です。

熱可塑性接着剤

熱可塑性接着剤は、常温で強力な接着力を発揮し、劣化することなく溶解させて再加工することができます。

以下のような例があります。

  • PVA / PVAc(ポリ酢酸ビニル、木工用接着剤としても知られています)
  • EVA (エチレン-酢酸ビニル共重合体)
  • PE (ポリエチレン)
  • PP (ポリプロピレン)
  • PA (ポリアミド)
  • ポリエステル
  • アクリル
  • ニトロセルロース(硝酸セルロース)
ホットメルト接着剤は熱可塑性です。

熱硬化性接着剤

熱硬化性接着剤は、硬化時に強力で恒久的な架橋を形成します。これにより、恒久的で、耐熱性があり、劣化もせず変質することもない不溶性の結合が形成されます。

以下のような例があります。

  • フェノール類(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)
  • 尿素ホルムアルデヒド(尿素ホルムアルデヒド樹脂) 
  • エポキシ(エポキシ樹脂、別名ポリエポキシド)
  • 不飽和ポリエステル
  • ポリウレタン
エポキシ接着剤は熱硬化性です。

主なポリマー接着剤の種類

ポリマー接着剤は、その用途によって分類することもできます。接着剤の主な種類は以下の通りです。

  1. 構造用接着剤
  2. エンジニアリング接着剤
  3. ホットメルト接着剤
  4. 感圧接着剤
  5. UV硬化型接着剤

構造用接着剤

構造用接着剤は、金属、複合材料、プラスチック、ガラス繊維、木材、石材など、さまざまな材料と強力に結合するように設計されています。

高い耐荷重性、長期耐久性、耐熱性、耐溶剤性が要求される用途に使用されます。とりわけ、構造用接着剤は、釘、ネジ、リベット、ボルト、溶接を伴う他の接合方法の代わりとなったり、補完したりすることができるという特徴があります。

構造用接着剤の主な種類は以下の通りです。

  1. エポキシ接着剤は、エポキシ樹脂と硬化剤からなる1液型または2液型の接着剤です。高い強度と優れた耐熱性、耐薬品性で知られ、モビリティ用工業用、建設用として人気があります。それだけでなく、電気絶縁性も高いため、電子部品にも適しています。
  2. ポリウレタン接着剤は、優れた柔軟性、耐衝撃性、振動減衰特性を示します。自動車、船舶、航空宇宙などのモビリティ分野でよく使用されています。
  3. アクリル系粘着剤は、速硬化性、優れた接着強度、強靭性、耐久性、優れた耐熱性、耐薬品性を備えています。耐油性のない接着剤が使えないような油性の環境でもよく使われます。例えば、モビリティ工業·建設電子機器、パッケージングなどの分野です。

まとめると、構造用接着剤にはさまざまな種類があり、モビリティ電子機器工業、建設など、さまざまな産業にとって魅力的な選択肢となっています。

構造用接着剤の用途

エンジニアリング接着剤

エンジニアリング接着剤に正式な定義はありませんが、構造用接着剤に比べ、強度要件がそれほど厳しくない高性能接着剤と考えることができます。工業製品の幅広い接着用途における様々なニーズに合わせて開発されています。

構造用接着剤と同様に、エンジニアリング接着剤にも3つの主要なタイプがあります。

  1. 嫌気性接着剤 (表面活性化アクリルとも呼ばれる)は、空気がなく、金属イオンが存在すると硬化します。したがって、ボルト、ネジ、ナットなどのネジ付き金属部品の固定やシールに適しています。このため、「スレッドロッカー(ネジロック剤)」とも呼ばれます。密閉性、耐振動性、耐薬品性、カスタムトルク値(制御された摩擦)が必要な場合に有用です。
  2. シアノアクリレート系接着剤は、瞬間接着剤としても知られています。硬化時間は数秒から数分と非常に短くなっています。その他の利点としては、強力な接着強度、様々な表面素材への良好な接着性、良好な耐熱性·耐薬品性、優れた透明性などが挙げられます。電子機器、木工、医療(承認が必要)、工芸など、さまざまな産業における小さな部品や表面の接着に最適で、一般家庭でもよく使われています。
  3. シリコーン接着剤は、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れています。用途が広く、柔軟性があり、信頼性の高いシールを形成することができます。その用途は、モビリティ電子機器工業·建設医療(承認が必要)、家庭用など多岐にわたります。

エンジニアリング接着剤には、多くの産業で重要な役割を担っている理由となるユニークな硬化メカニズム、機能、特性があります。

「スレッドロッカー(ネジロック剤)」はエンジニアリング接着剤の一例です。

ホットメルト接着剤

ホットメルト接着剤は熱可塑性接着剤です。熱の影響を受けても劣化することなく溶融し、高温の液体として溶融状態で接着面に塗布することができます。冷却すると固化し、強固な結合を形成します。

ホットメルト接着剤に使われるポリマーの一般的な例としては、以下のようなものがあります。

  • EVA (エチレン-酢酸ビニル共重合体)
  • ポリオレフィン:アタクチックポリプロピレン(APP)、非晶性ポリアルファオレフィン(APAO)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)など。
  • PA (ポリアミド)
  • ポリエステル
  • ポリウレタン
  • スチレン系ブロック共重合体
  • アクリル系ブロック共重合体
  • ブチルゴム
  • EPR(エチレン·プロピレンゴム)
  • SBR (スチレン·ブタジエンゴム)

これらのポリマーは、添加剤を配合して、粘着特性やその他の性能特性を改良することができます。そのような添加剤の例としては、粘着付与剤、ワックス、可塑剤、充填剤、酸化防止剤などの安定剤が挙げられます。

ホットメルト接着剤は、さまざまな素材への迅速な接着を可能にします。アプリケーター·システムやグルーガンで簡単で正確に塗布することができます。無溶剤接着剤は、潜在的な危険性のあるVOC(揮発性有機化合物)を含まないため、溶剤形接着剤よりも安全で環境に優しいです。いったん冷えて固まると、環境温度が融点以下にとどまる限り、概して良好な耐熱性を発揮します。

ホットメルト接着剤塗布システム

感圧接着剤(PSA)

感圧接着剤(PSA)は圧力をかけると活性化します。そして基材との結合が開始されます。一般に、接着の強さは加える圧力の大きさに左右されます。

ほとんどのPSAは一般的な室温範囲では機能しますが、高温または低温では機能しません。圧力を加えると活性化します(熱、溶剤、水による硬化は必要ありません-ただし、例外あり)。

テープ、ラベル、ステッカーは、PSAの一般的な用途です。PSAは、光学フィルム、表面保護フィルム、パーソナルケア、医療(要承認)用途にも使用されます。要求特性を達成するために、化学添加剤や改質剤をその製造や塗布時に使用することができます。

テープやラベルは感圧接着剤を使用しています。

UV硬化型接着剤

UV硬化型接着剤は、紫外線(UV)にさらされると硬化します。その硬化は、紫外線を活性化エネルギー源とする光重合と呼ばれる化学反応に依拠しています。エネルギーは光重合開始剤に吸収され、液状ポリマー接着剤を固体または高度に架橋された状態に変えます。

UV硬化型接着剤は、わずか数秒から数分という迅速な硬化が特徴です。ガラス、プラスチック、金属、セラミックなどさまざまな表面に強力な結合を形成でき、耐薬品性、耐熱性、耐湿性にも優れています。

用途としては、電子機器医療(承認が必要)、モビリティスポーツ用品や靴などがあります。UV硬化型接着剤には、液状で直接塗布されるものもあれば、テープやラベルの接着面の一部となるものもあります。

UV硬化型接着剤

最適なポリマー接着剤の選び方

以下は、あなたの用途に最適なポリマー接着剤を選択する際に取るべき手順です。

  1. 結合基材を理解する
  2. 塗布中のオープンタイム(セットアップ完了までの時間)とキュアタイム(接着部品が使用可能になるまでの時間)を決める
  3. 塗布と硬化の方法を判断する
  4. 性能特性(強度、柔軟性、硬度、粘度、振動減衰性、色など)を特定する
  5. 環境条件(温度、湿気、化学暴露、紫外線)を理解する
  6. テストの実施
  7. 健康と環境への配慮
  8. コストと入手の容易さを勘案

これらのステップにおいて、技術資料を参照したり、専門家からアドバイスを受けたりして、最適なポリマー接着剤を選ぶようにしてください。

多くの場合、化学添加剤や改質剤を加えて、用途のニーズに合わせて粘着ポリマーを精密にカスタマイズすることができます。弊社の専門家が喜んでアドバイスいたします。

クラレの高分子接着材料

クラレは、ポリマー接着剤用途に幅広い特殊ポリマーを提供しています。これらの中には、接着剤のベースポリマーとして使用できるものもあれば、接着剤の性能特性を向上させるための添加剤となるものもあります。

<セプトン>と<ハイブラー>について

<セプトン>と<ハイブラ->は汎用性の高い高性能熱可塑性エラストマー(TPE)です。そのスチレン系ブロック共重合体(SBC)の分子構造は、ゴムのような弾性と熱可塑性加工性の利点を兼ね備えています。

<セプトン>は、広い温度範囲で優れた性能を発揮し、耐薬品性、耐候性、紫外線耐性、電気絶縁性にも優れています。

〈ハイブラー〉には、耐久性のある水添系銘柄(〈ハイブラー〉7000-シリーズ)と未水添系銘柄(〈ハイブラー〉5000-シリーズ)があります。〈ハイブラー〉は高い制振性能を発揮します。〈ハイブラー〉7000-シリーズは、ポリプロピレンとの相溶性に優れています。

<セプトン>と〈ハイブラー〉は、ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、あるいはポリオレフィン系接着剤の添加剤として使用することができ、その柔らかさ、伸縮性、耐衝撃性、粘着性、凝集力をカスタマイズすることができます。

セプトン™

クラレ液状ゴム

<クラレ液状ゴム>は 「反応性可塑剤」のように作用して、コンパウンドの流動性を向上させ、粘度を下げます。<クラレ液状ゴム>シリーズには、液状ブタジエンゴム(L-BR)、液状イソプレンゴム(L-IR)、液状スチレン-ブタジエンゴム(L-SBR)などがあります。

<クラレ液状ゴム>をポリマー接着剤の添加剤として使用すると、接着強度や粘着性を向上させる改質剤として機能します。官能化グレードは、金属、ガラス、繊維などの基材への接着性を向上させることができます。UV硬化グレードはUV硬化型接着剤の成分として使用できます。

クラレ液状ゴム

液状ファルネセンゴム

液状ファルネセンゴムは、再生可能な原料であるサトウキビから得られるバイオ由来のモノマーであるβ-ファルネセンをベースとする液状ゴムです。液状ファルネセンゴムを使用することで、メーカーは製品中のバイオ由来原料の含有量を増やすことができます。

分岐した分子構造、低粘度、高分子量に起因する高い反応性により、液状ファルネセンゴムは粘着性や凝集力といった接着特性を改質することができます。

液状ファルネセンゴム

透明なTPE、クラリティ™

透明なTPEである<クラリティ>は、実にユニークな特性を持つアクリル系ブロック共重合体です。自己接着性があり、透明度が高く、柔軟性があり、優れた性能特性、耐候性、加工性を有しています。

<クラリティ>は接着剤のベースポリマーとして、あるいは従来の接着剤の改質剤として使用できます。優れた柔軟性と自己接着性により、<クラリティ>は可塑剤や粘着剤がなくても使用できます。低臭気性でホットメルト適合性があるため、溶剤を使用しない接着剤への使用が可能になり、溶剤を使用する工程で生じる健康上の懸念や換気の必要性がなくなります。<クラリティ>はテープやラベルに用いることもできます。

<クラリティ>は剥がしても従来の接着剤に比べて残渣が非常に少なく、再加工が容易になります。また、粘着剤に<クラリティ>を使用することで、型抜き性や形状安定性に優れ、目的の形状を長時間保持することができます。

<クラリティ>が提供するもう一つの重要な利点は、食品関連用途にも使用できることです。国によっては、<クラリティ>はそのような用途に必要な承認を得ています。詳しくは、お問い合わせフォームより<クラリティ>チームまでご連絡ください。

透明なTPE、クラリティ™

イソバン™

<イソバン>は、イソブチレンと無水マレイン酸のアルカリ水溶性共重合体です。<イソバン>は、木工用ポリ酢酸ビニルのエマルジョン接着剤の添加剤として使用できます。<イソバン>は初期粘着性と耐熱性を向上させることができます。


イソバン™

お問い合わせ

クラレグループの営業活動における個人情報の取り扱いにつきましては、「Customer privacy notice」 for the Kuraray Group’s handling of personal information related to sales and marketing activities.
If you agree to the Customer Privacy Notice, please check the box and submit your inquiry.
Please refer to the Privacy Policy and Cookie Policy for the handling of other personal information.
I agree to the Customer Privacy Notice. *
* 必須事項