医療用熱可塑性エラストマー用途
近年、医療機器メーカーからの熱可塑性エラストマー(TPE)の需要は高まっています。クラレは、医療用グレードのTPEを製造、販売するメーカーとして、信頼性の高い、高品質の製品の提供に努めています。クラレの水添スチレン系ブロックコポリマー(HSBC)は、安全性が高く、医療機器開発において高い性能と柔軟性を発揮します。ISO 10993で定められる生体適合性や、米国薬局方(USP)、欧州連合(EU)、アメリカ食品医薬品局(FDA)等、医療や食品の用途における主要な規格の要求事項を満たす銘柄もございます。
クラレが製造する医療用グレードのTPEは、柔軟性と弾性が求められる多くの用途(輸液バッグ、チューブ、医療用ゴム栓など)で、PVCやシリコーンゴムなどの従来の素材の代わりに活用されます。これらの素材は、従来の材料と比較して以下のような強みがあります。
〈セプトン®〉〈ハイブラー®〉医療用グレード
クラレが製造するTPEのうち、医療用グレードには多くの優れた特性があります。例えば、PVCのように可塑剤を含むことがなく、シリコーンゴムよりも安価です。リサイクル性にも優れます。また、医療用グレードを用いた製品は様々な方法で滅菌可能で、浸出物の量も非常に少ないのが特徴です。
〈ハイブラー〉 7000-シリーズの製品、〈ハイブラー〉 7125F (V-SEPS)と〈ハイブラー〉 7311F (V-SEEPS)は、医療用フィルムやチューブに活用でき、透明性、柔軟性、耐キンク性に優れます。〈ハイブラー〉は、ポリプロピレンとの良好な相溶性を有し、〈ハイブラー〉とポリプロピレンから製造したコンパウンドは、高い引張強度と優れた耐衝撃性を示し、非常に容易に加工することができます。また、他のエラストマーと比較して、〈ハイブラー〉のポリマー構造により、酸素と水に対する比較的良好な透過性が保証されます。
クラレの医療用グレードTPE
- 〈セプトン〉 2004F
- 〈ハイブラー〉 7125F
- 〈ハイブラー〉 7311F
特長
- 柔軟性
- 優れた加工性
- 高い透明性
- ラテックスフリー
- 可塑剤不使用
- フタル酸系可塑剤フリー
用途
- PVCの代替
- シリコーンゴムや天然ゴムの代替
- 医療用フィルム
- 医療用チューブ
- 輸液バッグ
高い安全性
医療製品には高い安全性と信頼性が求められます。クラレのTPEのうち医療用グレードは、生物学的試験である、ISO10993-4(溶血性試験)、-5(細胞毒性の試験)、-10(皮膚感作性試験)、-11(全身毒性試験)を含むISO10933に適合しています。また、医療用グレードは、USPクラス〈87〉(In-Vitro Biological Reactivity – Cytotoxicity Testing)およびUSPクラス〈88〉(In-Vivo Biological Reactivity – Class I-VI Testing)の要件を満たしています。
クラレは高い安全性を誇る医療用HSBCを提供します。衛生面が特に重視される用途にこの素材を用いた製品を使用できます。クラレの〈セプトン〉、〈ハイブラー〉は、フタル酸エステルなどの可塑剤を含まず、溶出試験における浸出物の溶出量も微量です。また、天然ゴムラテックスを含まないため、アレルギーを引き起こすリスクもありません。医療用TPEは、電子線、ガンマ線、酸化エチレン、高圧蒸気滅菌器などの一般的な方法で滅菌することができます。
医療用グレードのTPEは動物由来の原料は使用していません。
高い柔軟性と品質
クラレの医療用グレードTPEは、さまざまな方法で加工可能です。射出成形、ブロー成形、押出成形、共押出成形などを利用して、射出成形品、フィルム、シート、異形成形体、チューブなどを効率的に生産することができます。
クラレの医療用グレードTPEとポリオレフィンのブレンド物は透明性が高く、自由に着色も可能であり、各種医療用機器用の材料として好適です。医療用グレードTPEとポリオレフィンとのコンパウンドは、透明性、柔軟性、耐熱性、耐圧性、耐キンク性に優れます。
PVCやシリコーンゴムの代替
クラレのHSBCタイプTPEは、他の素材と比べて優れた特性を持ちます。医療用グレードTPEは、医療用途でよく使われているPVCと異なり、フタル酸系可塑剤を含みません。医療機器製造において、安全性の高いPVC代替材料として医療用のTPEが採用されるケースが増えています。
さらに、PVCとは異なり、TPEの製造時、使用時、焼却時に塩素やダイオキシンは発生しません。
TPEは、シリコーンゴムの代替品としても適用が可能です。医療用グレードTPEは、製造が容易です。
医療用グレードTPEの主な用途
フィルムと輸液バッグ
クラレが開発した柔軟でゴム弾性に優れたスチレン系ブロック共重合体は、ポリオレフィンとの相容性、特にポリプロピレン(PP)との相容性に優れているため、それらとドライブレンドして、フィルム製造や押出成形に利用できます。市販のポリオレフィン樹脂を単体で使用する場合に比べて、フィルム物性の設計における自由度が高まります。
チューブ
クラレの医療用グレードTPEのうち、〈ハイブラー〉はPPと組み合わせることで医療用チューブに要求される、透明性、柔軟性、耐キンク性に優れた素材になります。〈ハイブラー〉は、ポリプロピレンとの相溶性が高く、非常に簡単に加工できます。
〈ハイブラー〉とPPをブレンドすることで、良好な耐キンク性を有し、溶剤を用いた接着も可能なチューブを製造できます。チューブで体内に液体を注入する用途においては、高い耐キンク性が重要な意味を持ちます。医療用チューブを大きく曲げる場合には十分な耐キンク性が確保されなければなりません。射出成形品を伴うチューブは、通常、溶剤で結合します。適切な溶剤を使用することで、〈ハイブラー〉で高い接着強度を実現することができます。
粘着剤
〈セプトン〉各種銘柄は、絆創膏用粘着剤製造のための原料としてひとつの選択肢となります。〈セプトン〉を用いた粘着剤では、接着性と凝集性のバランスを確保しながら、良好な剥離性、快適な着脱感を実現できます。
柔軟性のある部品
クラレでは、医療用の柔軟性の求められる部品向けにHSBCを販売しています。例えば注射器のストッパーや医療用チューブのコネクター、ワクチン、薬の瓶を密閉するための栓などに適用可能です。
免責事項
製品の安全性、取扱い等の詳細につきましては、弊社の安全データシートをご参照ください。また、医療、ヘルスケア、食品接触用途へのご使用にあたり、追加情報が必要な場合は、弊社担当者にお問い合わせください。なお、原則として、人体に埋植して使用される機器または材料への適用はお断りしております。
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一般銘柄の適用可能性
クラレでは、医療用フィルム、粘着剤、チューブなどの用途で高い品質基準を満たす〈セプトン〉シリーズとして、〈セプトン〉 2000-シリーズ(SEPS)、〈セプトン〉 4000-シリーズ(SEEPS)、〈セプトン〉 8000-シリーズ(SEBS)を販売しています。〈セプトン〉 2000-シリーズや〈セプトン〉 4000-シリーズなど、〈セプトン〉、〈ハイブラー〉の一部の銘柄は、絆創膏用粘着剤の製造に使用することができます。低溶融粘度(高流動)、非常に優れた低温特性、低せん断速度における優れた加工性などの性質により、〈セプトン〉 4000-シリーズは高い加工特性を誇り、結果として、広い温度範囲にて柔軟なコンパウンドが得られます。医療用ゴム栓、シリンジのストッパー、義肢装具用ゲルなどの用途においても〈セプトン〉を用いることでの柔軟性、ゴム弾性、加工性に優れるコンパウンドを製造することが可能になります。
クラレは、水添スチレン系ブロック共重合体ラインナップとして、義肢装具用ゲルに適した様々な素材を販売しています。〈セプトン〉 4000-シリーズ(SEEPS)と〈セプトン〉 J-シリーズは、義肢装具用ゲルに必要とされる安定性や極めて高いレベルでの柔らかさを与え、皮膚のような感触を実現します。これらのエラストマーは、多くの用途でシリコーンゴムの代替品として活躍しています。
〈セプトン〉 J-シリーズと〈セプトン〉 4000-シリーズは、持続的な安定性と低い圧縮永久歪みが求められる高機能製品向けに開発されました。用途としては、義肢装具の内素材や包帯などが挙げられます。優れた衝撃吸収性と非アレルギー性を備えたこれらの製品は、同分野で定められる厳しい基準を満たしています。
絆創膏用粘着剤には、クラレの各種〈セプトン〉が適しています。例えば、〈セプトン〉 2000-シリーズや〈セプトン〉 4000-シリーズなどがあります。
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