Yoshihiro Morishita

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森下義弘
エラストマー事業部
マーケティング担当

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自動車用途

従来の自動車業界では、ボディ、エンジン、内装材などの素材として主に金属が使用されてきました。しかし現在では、自動車を構成する約3万の部品のうち、約3分の1が樹脂で作られています。中でも、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、PVCの4種類は、自動車用途に使用される樹脂の70%以上を占めます。

自動車用樹脂は、内外装部品における設計自由度が高く、耐久性、触感、耐摩耗性、制振性に優れます。さらに、加工がしやすいのが特長です。また、自動車の軽量化が進む中で、樹脂は大きな役割を果たしており、使用量が増えています。

樹脂は金属やガラスと比較して軽いため燃費が向上し、二酸化炭素の排出量削減に貢献します。さらにリサイクル性に優れていることから、サステナブルな材料としてお使いいただけます。

電気自動車の台頭により、自動車部品には新たな特性が求められるようになりました。例えば、耐熱性などへのニーズは変化していくでしょう。

クラレの製品は様々な自動車部品に使用されています。

自動車用途向け製品

クラレの製品は、多種多様な自動車部品に使用されています。例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)や液状ゴムは、タイヤ、内外装部品などに使用されています。機能性、耐久性、耐摩耗性などの特長と樹脂使用による軽量化により、排出ガスの削減や安全かつ快適なドライブに貢献しています。

自動車業界の課題への取り組み

自動車業界は、騒音や排気ガスの削減、安全性や性能の改善、軽量化、快適性の向上など、多様な課題に直面しています。クラレは、自動車の性能を向上させる高機能樹脂をお客様それぞれのニーズに合わせて提供します。

クラレは、水添スチレンブロック共重合体(HSBC)タイプの熱可塑性エラストマー(TPE)のリーディングサプライヤーです。TPEは、熱可塑性樹脂とゴムの弾性特性を兼ね備え、あらゆる形状に加工することができます。TPE製品は、リサイクルが可能で、環境に優しく、PVCと異なり、有害な可塑剤を使用せずに利用できます。

自動車業界における課題は増え続けています。クラレが提供する製品は、内外装部品、デザインの最適化、快適性の向上、低燃費などのニーズを満たすためのソリューションを提供します。

自動車用樹脂のさまざまな特性と、適した用途

タイヤ

タイヤの性能は、グリップ力、燃費、耐久性という3つの要素で決まります。タイヤには、冬用、夏用、オールシーズン、超高性能(UHP)、レーシング、産業車用(飛行機、トラック、バス、農業機械)など、用途に応じた種類があります。クラレでは、2種類のタイヤ用製品を販売しています。タイヤ用製品には、〈クラレ液状ゴム〉と〈ハイブラー〉があります。

〈クラレ液状ゴム〉は二重結合を有するため固形ゴムと共架橋することができる「反応性可塑剤」としての特性を有しています。通常のオイルと同様にムーニー粘度を低減しつつ、移行性を抑えることができ、最終製品の品質を安定に保つことが可能になります。また〈クラレ液状ゴム〉を使用することで、タイヤの耐摩耗性、フィラー分散性、グリップ特性などパフォーマンスを向上できます。

〈クラレ液状ゴム〉を使用したタイヤは、濡れた路面、または凍った路面で高いグリップ力を発揮します。また液状ゴムの添加により、転がり抵抗を最適化することによる燃費向上と、タイヤの長寿命化に寄与します。液状ファルネセンゴムは、環境にやさしい製品です。原料には、再生可能な資源であるサトウキビが使用されており、二酸化炭素排出量削減に貢献します。

スチレンとジエンからなる当社独自のトリブロック共重合体〈ハイブラー〉を使用したタイヤは、冬用およびオールシーズンタイヤのウェットグリップ性能を大幅に向上させます。

このような特性は、例えば電気自動車(EV)のように、長い使用期間と適切な転がり抵抗が要求される場面においてますます重要になっています。

〈クラレ液状ゴム〉は、タイヤの性能をさまざまな側面から向上させます。

特長

  • タイヤの長寿命化
  • 耐摩耗性向上
  • フィラー分散性向上
  • グリップ特性向上
  • 燃費向上
  • 低移行性
  • 生産効率の向上
  • 混合工程におけるエネルギー消費低減

内装材

内装材に樹脂を使うことで、良好な手触りが得られます。また、オイルの移行が少ないこと、高い耐熱性、グリップ力の向上、圧縮永久歪みが小さいことなどの利点もあります。オイルの移行が少ないことで、メンテナンスにかかる費用が減り、安定性と保存性が向上します。

クラレの製品は内装部品やソフトパーツ(ダイヤルやボタン、ラジオのバスシェーカーなど)に使用可能です。これらの用途には、以下の〈セプトン〉、〈クラリティ〉が適しています。

クラレの製品は内装部品設計のデザイン自由度を向上させます。

外装材

樹脂は、多くの外装材に利用されています。軽量化による燃費改善だけでなく、快適性や安全性を向上させる効果があります。

クラレでは、サイドミラー、ルーフレール、スポイラーなどの外装材向けの製品をご用意しています。加工が非常にしやすく、圧縮永久歪みが小さく、流動性や耐衝撃性が高いのが特徴です。さらに、汎用性が高く、設計の自由度を高めることに貢献します。射出成形は、大型部品の製造に活用することができます。

エンジンルーム

パワートレーン、エンジン、電子部品など、エンジンルームの中の数多くの高性能な部品にも樹脂が使われています。これらの部位においては、従来の素材に代わって樹脂の利用が増えています。ホースやノズルには高い弾性が、ガスケットやグロメットにはオイル漏れを防ぐ特性が必要とされます。電気自動車への移行に伴い新たな特性が求められるようになり、耐熱性プラスチックなど、求められるニーズも変化しています。

クラレの製品は、ホース用ゴムの代替品として使用できます。ガスケット等を射出成形することで製造にかかる時間を短縮することができます。架橋は必要ありません。

〈セプトン〉 V-シリーズは、従来のセプトンシリーズと異なり、ハードブロックを架橋させることができます。これにより、ゴム弾性と低温特性を維持しつつ優れた耐熱性や耐油性・長期的な圧縮永久歪を発現します。これらの特長を活かし、エンジンルーム内の射出成形部品などに使用されます。

〈クラレ液状ゴム〉は、エンジンルーム内のゴム部品全般に使用されています。液状ゴムは反応性可塑剤として使用されますが、通常の可塑剤よりも高い分子量を有します。また二重結合を有しておりベースゴムとの共架橋が可能なため、ブリードアウトが大幅に減少し製品寿命が向上します。また、一般的なオイルと同様にムーニー粘度を下げ、ゴム練り時の加工性を改善することが可能です。

さらに、液状ゴムをゴム製品に添加することで、力学物性、ゴム表面の平滑性、金属への密着性などの物性も向上できます。

クラレの自動車用材料は、耐熱性、耐薬品性に優れます。

騒音・振動・ハーシュネス(NVH)と制振性

自動車における騒音・振動・ハーシュネス(NVH)はできるだけ抑えたいものです。NVHは、フロントガラスやサイドウィンドウ、ドアやトランクの密閉度合いなど、さまざまな要因で発生します。

クラレの製品は、NVHの低減に貢献します。液状ゴムを接着剤やシーラントに組み込むことで、防音・制振性能の向上、鋼板への密着性改良などが期待できます。

自動車業界では、遮音や制振のためにアスファルトシートが広く使われています。現在、多くの自動車メーカーが、完全自動化の塗布型制振材への切り替えを検討しています。この制振材は液状であり、アスファルトシートと比較して大きな利点があります。塗布工程を自動化することにより生産性を向上させ、従来のアスファルトシートを手作業で取り付けるよりも効率的です。さらに、優れた防音性能を持ち、軽量であることも大きな強みです。これにより、この素材は自動車軽量化の一端を担い、燃費向上と二酸化炭素排出量の削減に貢献します。

車内の騒音レベルを下げることは、快適なドライブのために重要な要素です。そのため、自動車の内装材に使用される自動車用プラスチックの主な目的は、「騒音の減衰」と「騒音の低減」になります。クラレの熱可塑性エラストマー〈ハイブラー〉は、幅広い温度で優れた制振性を発揮します。これにより、私たち人間の可聴域である低周波での制振性能が高まります。

制振性を有する樹脂は振動減衰により不快なノイズの低減に貢献します。

照明用導光棒

車内の照明用導光棒は、均一な光に加え、柔軟性があり、多様な形状に利用しやすく、さらに耐久性があることが理想です。それこそが、デザインの自由度やカスタマイズの可能性を高め、最適な環境を実現する鍵となります。

クラレのアクリル系エラストマー〈クラリティ〉は、このような条件に合致します。例えば、光の出射方向を制御し輝度を高める反射層を備えた導光棒などのイルミネーション用部材として適しています。

〈クラリティ〉は、その優れた透明性と柔軟性から、自動車用のイルミネーション部材に使用することができます。

サステナビリティ

クラレは素材・中間材メーカーとして、低炭素・低環境負荷社会の構築に必要な素材・中間材を世の中に提供し、また、それらをできるだけ低い環境負荷で製造することが使命と考えています。こうした考え方のもと、クラレはグローバルなものづくりを通じて、地球温暖化対策の推進、化学物質の排出抑制、資源の有効利用などの環境改善に継続して取り組んでいます。

自動車業界では、現在および将来的な二酸化炭素排出量削減目標達成に向けた軽量化のために樹脂使用量が増加する傾向にあります。同時に、熱可塑性樹脂を使うことでリサイクルを促進することができます。

サステナビリティには数多くの側面があります。例えば、ゴムの代わりにTPEを使用すると、リサイクルが容易です。電気自動車には軽量化が不可欠です。TPEはPVCに代わる環境に優しい素材です。クラレの製品は、不快な臭いの原因となるVOC(揮発性有機化合物)の発生が少ないことも特長です。 クラレは他の企業と協力し、サーキュラーエコノミーのためのソリューション構築に取り組むと共に、専門知識を活かして、リサイクル可能な新素材の開発に取り組んでまいります。

クラレでは環境負荷がより少ない、また環境改善に貢献する技術の開発、提供に取り組んでいます。その一例として、以下の2つのバイオベースポリマーが挙げられます。

  • 液状ファルネセンゴムは、サトウキビから得られるβ-ファルネセンを原料とする製品です。タイヤの氷上グリップ性能などのパフォーマンスを高めることが可能です。
  • クラレは、水素添加スチレンファルネセンブロック共重合体(HSFC) 〈セプトン〉BIO-シリーズを開発しました。〈セプトン〉BIO-シリーズは、β-ファルネセンを原料として合成され、スチレン系エラストマーとして使用可能です。
クラレはサステナビリティの促進を目指し、サーキュラーエコノミーの一端を担うソリューション開発に取り組んでいます。

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