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森下 義弘
エラストマー事業部
マーケティング担当

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Polymer modification

ポリマーを改質することで、熱安定性、衝撃強度、剛性、生分解性、柔軟性など望ましい特性を付与し、結果として新しい材料が得られます。

比較的安価で標準的なプラスチックを、ポリマー改質によって特性をカスタマイズした新しい材料に変えることは、経済的にも魅力的なことが多いです。どんな添加剤を選択するかは、対象となるポリマー、望まれる効果、および加工条件によって異なります。

新たに改質したポリマーの物性を調べる研究者。

ポリマー改質の種類

知っておきたいこと:ポリマー改質は、様々な形態の物理的改質と、ポリマーを化学的に変化させて新しい材料を形成する化学的改質に大別されます。

物理的改質

物理的改質には、放射線による改質と同様に、分子を絡ませたり、捉えたりするプロセスが含まれます。

化学的改質

化学的改質は、新しいポリマーを合成するための一般的な選択肢です。よく知られている例としては、加硫や無溶剤反応押出があります。

表面改質vsバルク改質

表面特性は、材料が意図したとおりの機能を発揮するために重要です。ポリマー自体は、多くの場合、必要な表面特性を有していません。そのため、特にプラスチック産業では、耐摩耗性や撥水性など所望の特性を得るために、表面改質技術が重要となっています。

ポリマー改質のもう一つの形態は、反応性または非反応性の押出によるバルク改質です。バルクの改質例を以下に示します。

ポリマーブレンドとアロイ

ポリマーを改質するもう一つの一般的な方法は、押出成形によって他のポリマーや改質剤とブレンドすることです。この混合ポリマーは、しばしばアロイと呼ばれます。この比較的簡単な方法で、PE、PS、PPなどの市販のポリマーを、より付加価値の高いカスタマイズされた材料に改良することができます。

架橋、分枝、鎖切断

ポリマーは、架橋、分枝、鎖の切断など、他のプロセスを使って改質することができます。電子ビームプロセスによる架橋は、一般的に成型部品の熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂にするために行われます。分枝は顆粒状のポリマーに施すことで、溶融特性を変化させます。一方、鎖切断は、分子間の結合を切断して特定の粒径を得るものです。

改質するポリマー

可能性は無限大なので、1つの記事で改質可能なポリマーすべてのリストを提示することは不可能です。クラレのエラストマーは、各種プラスチックの改質剤として使用することができます。以下では、クラレのポリマーが改質によく用いられるプラスチックについて詳しく見ていきます。

ポリマーペレット

ポリプロピレン(PP)

ポリプロピレン(PP)は、剛性が高く、耐熱性に優れています。しかし、このプラスチックの欠点は、特に低温での耐衝撃性が低いことです。PPの耐衝撃性や、透明性、耐候性、流動性などの特性を向上させるためには、適切な添加剤を使用します。例えば、PPに「ハイブラー® 7311F」「7125F」を添加することで、柔軟性や透明性を向上させることができます。特に、医療用チューブや医療用バッグなどの用途に適しています。また、セプトン™ 2004Fは、PPの低温での衝撃強度を向上させます。

改質ポリプロピレンは、低温(0℃)での耐衝撃性を向上させるために、スタジアムの座席に使用されています。

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ポリプロピレンの低温脆性を実証する(ChemEd X)

ポリエチレン(PE)

ポリエチレン(PE)は、さまざまな用途に使用されている熱可塑性プラスチックです。PEの利点は、コスト効率と耐寒性です。しかし、耐熱性、応力割れ性、接着性の悪さ、耐候性の悪さなどの欠点があるため、用途が限定されることが多くなっています。セプトン™ 4000-シリーズおよび8000-シリーズでポリマーを改質すると、これらの弱点を改善できることが多いです。

ポリエチレン製食品包装

ポリスチレン(PS)

ポリスチレン(PS)は、高い剛性、割れにくさ、高い表面品質を特徴とする透明なプラスチックです。発泡タイプのポリスチレンの製品としては、「スタイロフォーム™」が有名です。ポリスチレンの不利な特性はポリマー改質によって改善することができます。セプトン™ 2104、8006は、PSと併用することで耐衝撃性を向上させることができます。

発泡スチロールは、ダウ・ケミカル・カンパニーの登録商標です。

固形PSや発泡PSは、多くの産業で使用されています。例えば、家電製品の筐体にはPSが使われています。

ポリ塩化ビニル(PVC)

ポリ塩化ビニル(PVC)は、PE、PPに次いで3番目に重要なプラスチック用ポリマーです。 ポリマーの改質を行わない状態では、PVCの物性は限定的です。物理的な配合から化学反応による塩ビの鎖構造の変化まで、さまざまな改質が施されています。クラリティ™は、塩ビを軟化・可塑化し、塩ビの加工を容易にすることができます。

ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネート(PC)はかなり丈夫な素材です。しかし、プラスチックの厚い部分は、ノッチ付き衝撃強度が低くなるため、脆くなることがあります。この問題は、適切なポリマーを添加して、ノッチ付き衝撃強度を大幅に向上させることで解決できます。クラリティ™とセプトン™は、加工性を維持したままPCの衝撃強度を向上させることができます。

アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)

人気のレゴ®ブロックを知らない人はいないでしょう。プラスチック「アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)」の応用としてよく知られているものです。ABSは、優れた耐衝撃性、高耐熱性、高い表面光沢など、多くの優れた特性を備えています。さらに、このプラスチックは加工がしやすいのも特徴です。

欠点は、曲げ強度が中程度あるいは弱く、耐候性に劣ることです。ABS樹脂の弱い機械的・物理的特性を改善するためには、改質する必要があります。セプトン™、ハイブラー™、クラリティ™は、ABS改質剤として衝撃強度、柔軟性、伸度などを付与することができます。さらに、ハイブラー™ 5127と7125Fは、さまざまな温度で減衰特性を改善することができます。

レゴ®ブロックの素材はABSです。

ポリ乳酸(PLA)

ポリ乳酸(PLA)は、生分解性でバイオベースの材料であり、低コストの石油系ポリマーの代替品として使用することができます。PLAは加工が容易で、熱可塑性に優れています。また、脆く、靭性が低いという欠点があり、塑性変形による用途の制約があります。PLAの性能を向上させるために、PLAを柔らかくし、耐久性を高めるクラリティ™やセプトン™ BIO-シリーズがよく使用されます。さらに、クラリティは透明性の向上にも寄与しています。

ポリフェニレンエーテル(PPE)

ポリフェニレンエーテル(PPE)は、高温耐性を有する高性能な熱可塑性プラスチックです。PPEブレンドは、エレクトロニクス、家庭用、自動車、医療技術など、複数の市場で成形部品に使用されています。 耐衝撃性を高める「セプトン™」などの改質剤を配合することで、PPEの特性を広い範囲で改質することができます。

熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE-E、別名;COPE、TPC)

熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE-E)には、別の呼び名があるのをご存じでしょうか。TPE-Eは、COPEやTPCとも呼ばれます。このプラスチックは、熱老化や化学物質に対する耐性が非常に優れており、低温での衝撃強度も優れています。しかし、TPE-Eの硬度には限界があります。この欠点は、適切な添加物による改質で解消することができます。

改質TPE-Eはケーブルに使用されています。

ポリアミド(PA)

ポリアミド(PA)の最も有名な用途はナイロンです。ポリアミドの材料特性は、要求に応じて、強靭性や耐候性を向上させる改質によって最適化することができます。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、PETと似た性質や組成を持っていることをご存知でしょうか?PBTは、耐溶剤性に優れ、成形時の収縮が少ないことが大きな特長です。しかし、剛性、強度、ガラス転移温度はPETより低く、炭化水素や酸に対する耐性も満足できるものではありません。ポリマーの改質は、これらの制約を軽減するのに役立ちます。クラリティ™はPBTの流動性と靭性を向上させ、セプトン™は様々な温度での耐衝撃性を向上させることができます。

改質PBTの代表的な例として、高級キーボードのキーキャップが挙げられます。このようなキーキャップは、ABS製のキーキャップに比べ、半光沢で耐久性に優れています。

エチレンビニルアセテート(EVA)

エチレンビニルアセテート(EVA)は、耐熱性、耐老化性などの優れた特性を備えています。弾力性のある無色のプラスチックで、靴底や床材によく使われています。さらに、太陽光発電の太陽電池にもEVAが使われています。EVAの熱安定性、透過率、体積抵抗などの特性は、ポリマーの改質によって高めることができます。

ポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレート(PET)を外すわけにはいきません。ペットボトルでよく使われる熱可塑性プラスチックです。PETは、加工しやすくするため、微生物汚染を防ぐためや、明度、強度、透明度、耐久性を向上させるために、改質が行われています。PETで使用する表面改質領域

ポリマー改質のメリット

ポリマーの改質は、改質された材料に様々な所望の特性を付与することを目的としています。ポリマーの改質によって、相溶性、強靭性、耐熱性、耐候性、耐衝撃性など、プラスチックの重要な特性を改善することができます。

相溶化

ポリマーを混合することで、複数のポリマーの特性を併せ持つ新材料を開発することができます。しかし、化学構造が異なるため、ほとんどのポリマーは互いに混じり合うことができません。結果として、そのブレンドは多相形態を示します。このような場合、相溶化剤はプラスチックコンパウンドの形態を向上させるのに役立ちます。

多相ポリマーブレンドの相溶化

靭性

靭性の向上とは、これまで脆かった材料の耐衝撃性を強化することです。複数の成分からなるポリマーの開発では、比較的脆いプラスチックに靭性を分散させることで、エラストマーの靭性に好響が見られます。

耐熱性

耐熱性ポリマーは、エレクトロニクス、自動車、航空宇宙など多くの分野で重要な役割を担っています。インサート成形のように、樹脂と金属部品から複合材料を作る工程では、疲労破壊を防ぐために、樹脂に耐ヒートショック性が求められます。難燃化を施すことで、高耐熱性など用途に応じた特性を持つ材料を製造することができます。

REXUSロケットのペイロードモジュールは、ミュンヘン工科大学が開発した炭素繊維強化耐熱PEEKで作られています。画像はイメージです:A.ヘッダーゴット/TUM

耐候性

ほとんどのポリマーは、屋外で紫外線、空気、熱、湿気などにより不可逆的な物理的、化学的変化を起こします。風化によって変化する性質には、変色や色調の変化、光沢の消失、表面の腐食などがあります。ポリマーを改質することで、これらの弱点を克服したり、変化を防いだりすることができます。例えば、紫外線吸収剤や酸化防止剤の使用などが挙げられます。

耐衝撃性

プラスチックは、非常に過酷な用途に使われることも多くなっています。このような用途には、ダンピングや振動減衰が含まれます。異なる種類のポリマーを組み合わせることで、プラスチックは非常に特殊な要求を満たすことができます。相溶化剤のように適切な改質剤を使用することで、こうした要求の実現に貢献します。

ポリマーの耐衝撃性試験(シャルピー衝撃試験)

流動性

流動性とは、流体や緩い粒子状の個体の、流れるという特徴によって移動する能力のことで、射出成形を検討する際には特に重要です。流動性が低いと、金型上での材料の流動距離が短くなり、生産性に影響します。

当社のポリマー改質剤

クラリティ™

クラレのアクリル系ブロック共重合体クラリティ™は、その構造上、優れた透明性、耐候性、自己接着性、他の極性材料との良好な相溶性など様々な特性を発揮します。アクリル系ブロック共重合体は、極性プラスチック改質に強力な添加剤として使用することができます。

クラリティ™

セプトン™

高性能TPEであるセプトン™は、多くのTPEコンパウンドに使用されており、さまざまな形状に加工することが可能です。特定のグレードが認証され、消費財、医療、モビリティ、オイル改質などの用途で使用されています。水素化により、優れた耐熱性、耐候性を実現します。

セプトン™

セプトン™ BIO-シリーズ

バイオベースTPEであるセプトン™ BIO-シリーズは、独自の水素添加スチレンブロック共重合体(HSFC)です。セプトン™ BIO-シリーズを使用することで、コンパウンダーはバイオベースの含有率が高い化合物を製造することができます。一般的な用途としては、接着剤、シーラント、コンパウンド、コーティング、ポリマー改質などがあります。

セプトン™ BIO-シリーズ

ハイブラー™

ハイブラー™は、高い制振性を有するビニルを多く含む高性能TPEです。ハイブラー™ の水素添加グレードは、優れた耐候性とポリプロピレンとの相溶性を有し、ブレンドすることで優れた透明度と明度を実現します。 医療用フィルムやチューブ、ダンピング用途の成形品などに使用されます。 非水素化グレードは、制振シーラントに使用されます。

ハイブラー™

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